「ただし、エウロパは除く。」 科学と空想を具現化する映像表現

先月末、世界中の(ごく一部の)人々を震撼させるニュースが飛び込んできました。

■NASA、9月26日に木星の衛星エウロパ「驚くべき」発表を予告(AFP)

昨今のNASAは予算確保の為か、このような誇大告知を行う事が多く、いつもであれば静観を決め込むところではありますが、ことこの「エウロパ」に関してとなれば話しは別!
では、なぜそこまでの期待を煽られるのか。
それにはまず、この「エウロパ」という星がどんな存在なのかを知る必要があります。

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NASA/JPL/DLR

1610年にかのガリレオ・ガリレイにより発見された、木星の第2衛星であるエウロパ。
1990年代に行われたガリレオ探査機による調査では、エウロパの表面に氷が一度割れて再び固まったような地形が発見され、海の存在を強く想起させるものとして注目を集めました。
探査が進むにつれ、NASAはエウロパについてこれまでに「地殻下に生命にとって好条件となり得る液体水の海が存在することを示す有力な証拠がある」と発表。
2009年には、次期惑星探査ミッションの第一候補としてエウロパ探査を選定するなど、NASAにとってもこのエウロパが別格な存在である事が伺えます。

という事は…

今回の「驚くべき発表」=「地球外生命体の存在の発表」であると結びつける事は難しくありません。
案の定、このSNS時代ではその情報に(尾ひれが付いた状態で)、世界中から関心が集まります。

事態を重く見たのか、その後すぐにNASAは「エイリアンとは関係ない」と公式にツイート。
26日の重大発表を前にして、当初の勢いは一気に収束してしまいました…

そして迎えた9月26日。NASAで会見が開かれ、「木星衛星エウロパから吹き出す水と思われる物質を観測した」と発表しました。

■木星の衛星エウロパ、表面で水噴出か 高さ200キロ(朝日新聞)

もしそういった「吹き出す水(間欠泉)」が存在するのであれば、探査機が海に潜ったり地上に着陸しなくても、その間欠泉から水溶液を採取することも可能になると言われています。

エウロパの間欠泉については、2014年時点にも報告されていましたが、なかなか裏付けが取れず、異論を唱える研究者も多いとの事。
今回の発表も、「間欠泉が存在するのか、どうか」の確定的な証拠ではありません。

■Hubble Directly Images Possible Plumes on Europa(NASA)

今回の報告を2分にまとめた動画(英語版)

しかしながら、ある意味、我々が抱く宇宙ロマンの現実性に一歩近づいたと言えなくはなく、また、それに基づいた新たなる空想が広がる可能性も生まれた事になります。
早い話がSF(サイエンスフィクション)ですね。

誰しもが名前くらいは聞いたことがある「2001年宇宙の旅」は、その圧倒的な科学考証と狂気に満ちたアイデアを具現化した映画・小説として今もなお語られる事が多い代表的なSF作品。
その続編である「2010年宇宙の旅」では、今ブログの主題でもある「エウロパ」が登場し、そこに生命体が生息するという物語。
作品内に登場する架空のコンピュータHAL9000が語る「これらの世界は全てあなた方のものだ。ただし、エウロパは除く。決して着陸してはならない。」というセリフは、科学者やSFファンにとっては有名で、先の騒動でも多くの人が引用していました。

このような事からも、今回のNASAの発表予告は、人々を大きく期待させる要因が有ったと言えます。

現在では映像技術も格段に進歩し、映画「インターステラー」等は、実際の科学的知識や知見や理論に裏付けられたSF考証が素晴らしいと話題に挙がります。

■映画『インターステラー』スペシャル映像(ワーナー ブラザース ジャパン)

いまや科学的根拠や明確な資料があれば、世の中の事象は全て映像化する事が可能と言われる時代。
そこに、人間だからこそ出来る空想を加えれば、現実をも超えたより豊かな表現が出来る事でしょう。

そう考えると、あらためて映像による表現って魅力的ですよね。
(石井)